quote:マイクロソフト社のマックOS X版オフィスは高い評価を得ているが,それでも発売から13年経つ「ワード5.1」の足許にも及ばないというユーザーは多い。愛用者にとってワード5.1は速く,安定していて,強力な画期的ソフトだった。マイクロソフト社のプログラマーたちでさえ,ワード5.1はのちのバージョンより高く評価している。
『そう,あのとき使っていたソフトにsomewhatというフリーソフトがあった。まだネットスケープ4を使ってたときだから,マックOSのバージョンは7.6ぐらい?(はっきりおぼえてないよ) スケジュール管理や日記,アドレス帳などの機能も備えた統合ソフトだが,初回起動時や数ヶ月に1回,ウィザードが起動していろんな質問をしてきた。なんの意味があるのかさっぱり不明の質問で,たとえば「いまいちばん困っていることを選んでください」とか(よくある悩み事がリストされて選べた),「もっとも最近ついた嘘を正直に入力してください」とか,「太陽と満月と新月からいちばん好きなものを選んでください」とか,そんなのばかりだった。
日常的には,スケジュール管理や日記,テキストエディタ,あとメールソフトなどの機能をよく使う,動作が軽いよくできた統合ソフトだった。だがほかのソフトと大きく違う特徴があるわけでなく,よくあるソフトだと思って使ってたんだけど,そのうちあることに気付いた。どうも変な機能がある。そのうちのひとつは,これははっきり云って迷惑な動作だったが,somewhatを起動している間,表示されているOSの時計がよく狂う。でもいい加減に狂うのではなくある規則があり,夜はゆっくりと時間が流れるのだ。深夜に使っていると,朝が来るのが遅くなる。ただしスケジュール管理機能と連携していて,重要なスケジュールには影響しないようにしていたりするので,気付かない人もいたようだ。あとソフトの起動時に,なんとなく勇気が出るような箴言格言が毎度表示されるのも,統合ソフトとしては意味不明だった。
そしてもっとも変なのが,Lモードと呼ばれる説明書にない機能だ。「control」+「delete」+「esc」+「L」キーを同時に押すと起動し,とあるテキストがすでに表示されていて,自分で修正することもできる。そのテキスト修正では,いまのIMソフトにはよく搭載されている,ある単語を同じ意味のほかの言葉に置き換える機能も使えた。ただ当時のソフトなので,たいして多くの単語は搭載されておらず,「美人」が「佳人」とか「器量好し」とか「玉顔」とか「明眸皓歯」とかになるだけで,なんか一部の単語に偏っているのはすぐにわかった。その機能や,なによりLモードで表示されるテキストで,毎日使い続けた人はsomewhatがいったいなんのソフトかすぐにわかった。そのLモードで表示されるテキストは,自分が好きな人へのラブレターだった。そうか,あの質問も,日記も,メールのテキストも,スケジュールも,アドレス管理も,全部このラブレターのためだったんだ。そして,ラブレターをメールで送れてしまう。ラブレターを出せないどころか,書くこともできないような人には,うってつけ(?)のソフトだったんだね。』(via.『もう少し…もう少し…』アツミサオリ)
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